――おそ松兄さん!
その声は哀れにも宙をかいた。
なんで、こんなことになったのだろう。
――1回死んで!
――じゃ、死のうか?
――一人の世界があったらなぁ……。
「っ!」
チョロ松は勢いよく上半身を起こした。体は汗でびっしょりだ。パジャマを着ているのは、誰かが着替えさせてくれたのか。
夢を思い出す。途端に怖くなって、助けを求めるように十四松を見た。すやすやと幸せそうな寝息をたてていた。表情も柔らかく、見てるこっちまで安心する。
反対側、おそ松の方を見る。
一松、カラ松、トド松……自分。
おそ松のスペースは確保されているも、姿はなかった。だが、いつもどうり、幸せそうな寝息をたてる兄弟を見ていると、夢だと思えた。
「トイレ、かな」
他の兄弟に邪魔にならない程度の声で独り言をつぶやき、チョロ松はもう一度布団をかぶった。
次の日。チョロ松が起きると、兄弟たちが慌ただしく家の中を走っていた。
「何? 朝っぱらから」
まだ少し眠い目をこすって近くにいたトド松に聞いてみる。トド松はその声がチョロ松のものだと気づくやいなや慌てた様子で言った。
「おそ松兄さんが帰ってきてないの! 知らない?」
「え?」
まさか。
チョロ松の脳裏に昨日の事が浮かび上がった。