その翌日も、おそ松は帰ってこなかった。
「どうしよう……。また帰ってきてないよ?」
トド松が他の兄弟に問いかける。全員で顔を見合わせ、深刻そうな面をしてうなっていた。
兄弟の勘は百発百中と言ったところか、見事に当たった。
そんなこと、期待なんかしていない。
チョロ松は少々の苛立ちをおぼえた。
「行方不明ってこともありえるんじゃない? やっぱ、警察呼んだほうが……」
警察――。
「だ、大丈夫! 僕見たから! いたずらだって!」
焦りをごまかすように、チョロ松は引きつりながらも口角を上げた。
そのチョロ松の様子に異変を感じたのか、カラ松は眉を眉間に寄せた。
「ほら、昨日も言ったじゃん、見かけたし、そんな遠くないとこだったし! いたずらなんだって!」
叫ぶように訴えるチョロ松の目には、うっすらと涙がにじんでいた。自分をごまかすようにも聞こえるその訴えは、哀れでもあった。
その叫びをさえぎるように、十四松がつぶやいた。
「もし、帰ってこなかったら?」
「やめろっ‼」
チョロ松は反射的に叫んだ。
「冗談でも、やめろ……!」
チョロ松はそう言って顔をゆがませた。いっぽう、十四松はそんなチョロ松におびえる様子もなく、まっすぐ見つめていた。その口は、いつものように開き、微笑んでいた。
「万が一って、言うんだっけ? もしもってことがあったらさ、だめでしょ? 一応、警察も呼んでおこうよ」
「ね?」と優しく微笑む十四松におされるように、他の兄弟たちも微笑んだ。
「チョロ松兄さん、十四松兄さんの言う通りだと思う。警察、呼ぶね?」
トド松はそう言って、下へ降りて行った。それに続き、十四松、一松、カラ松と、降りて行った。
「……」
部屋に取り残されたチョロ松は、神妙な顔をして、唾を飲み込んだ。
それから少しして、警察が来た。事情聴取に関わりたくなくて、チョロ松は、部屋で一人うずくまっていた。
警察が、捜索をやめたら。やめる時まで、おそ松が帰ってこなかったら。チョロ松は、それをひどく嫌った。そうなると、もう会えない気がして。怖くて。でも、おそ松はここにいないから。
「もう、どうしようもないじゃん……」
チョロ松はそうつぶやき、折り曲げた足に顔をうずめた。