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Channel: 六色 ~おそ松さん 少し悲しげな六つ子のお話~
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六色 2-3

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松野家。やはり元気など出ない。神松の言葉も胸に引っかかり、締め付けられる。

「はぁ……」

 誰かのため息が部屋に響いた。それ以外の音は何も聞こえない。

 その時――。

 玄関から扉の開く音が聞こえた。

 5人はバッと顔を上げると、玄関へ我先にと走った。もつれる足を必死に動かし玄関に着くと、そこにいた人影に不覚にも涙を浮かべた。

「おそ松兄さん――!」

「よぉ!」

 いたずらな顔をして片手を上げるおそ松を、5人は囲んだ。

「おかえり!」

「心配したじゃん! もう、あとでおぼえといてね!」

「どれだけ心配したと思ってるんだ。ふざけるのもほどほどにしたらどうなんだ?」

「お詫びとして猫缶買ってよ」

 次々と話しかける。チョロ松は涙をぬぐうのに精いっぱいだった。それでも口はほころぶ。顔を上げ、チョロ松はおそ松を見た。すると、目が合った。

 

――え?

 

 チョロ松は説明できないような不安に襲われた。頭に雑音が鳴り響き、チョロ松は床に伏せた。頭痛がして、頭を押さえる。

「チョロ松兄さん?」

「違う!」

 金切り声でチョロ松は叫んだ。

「兄さんじゃない! お前誰だよ! 誰なんだよ!」

 違う、違う、違う。ヤダ、ヤダ。やめて。

 そう思ってもなぜかチョロ松は口からそう告げていた。

(違う、兄さんだ! 兄さんなんだ! そう思いたいのに! なんだよこれ! 黒い何かが襲ってくる! 怖い、怖い、怖い、怖い、こわい、コワイ、怖い!)

 チョロ松は耳を塞いだ。ひどく苦しく、自分の中の何かに悶えた。

 平常心を保ちたい。そう思い、すっと息を吸った。すると、耳鳴りも雑音も、頭痛も消えた。息を整え、兄弟を見る。みんな、困惑の表情でチョロ松を見た。無性に怖くなり、無理に笑顔を作った。

「なん、てね」

 そんなこと言われても、兄弟は気づいた。気づいてしまった。おそ松から漏れ出す異様な雰囲気に。

 そんな様子を悟り、一松がおそ松に問いかける。

「お前……誰?」

 聞いてみて、怖くなった。おそ松は、平気な顔をして笑っていた。

(なんだ? このドロドロした感じ……。怖い)

 そんな気持ちに気づかれないように、一松はおそ松を睨み、胸ぐらをつかんだ。

「答えろよ、なあ‼」

(やめて……)

 チョロ松は心の中で必死に声を絞り出していた。しかし、当の本人は床に伏せ、手足が震えて一歩も動けない状態。おそ松から感じるおどろおどろしいそれに息が詰まった。

 カラ松、十四松、トド松は、何も言わず成り行きを見ていた。一松を止める気など、さらさらなかった。おそ松の何かを、3人も感じていたのだ。

「誰だよ!」

 普段出さない大声を必死に絞り出し、一松はさらに問い詰めた。そのくらい、深刻な気がしたのだ。というのは建前で、ただただ、怖気ずく自分を紛らわしているのだ。

 おそ松が、一松の心の内を見透かしたように笑った。

 ――臆病者。

  その笑顔が、そう言っているような気がした。

「カリスマレジェント、人間国宝の松野家長男、松野おそ松だぞ!」

 にひ、と顔をくしゃくしゃにして笑ういたずらっぽい顔。懐かしくて恋しいそれも、また怖くなった。それ以上に天邪鬼がその感情を許さなかった。

 一松はおそ松を突き飛ばし、苦しそうにおそ松を睨んだ。

「兄さんみたいに笑うな……!」

 そう言って、一松はこの場から出て行った。


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