おそ松がいなくなってから、半月が経とうとしていた。焦りや不安は、もう隠しきれない。兄弟で話す機会も減ってきていた。
そこに、突然の来訪者が訪れた。
「神、松?」
「久しぶり」
5人はあっけにとられ、呆然と神松を見つめた。神松はその視線に曖昧な笑顔を浮かべて、話し始めた。
「あのさ、みんな」
「神松、お前今までどこ行ってたんだ?」
「うん、その話はまた今度するから。それより、みんななら気づいてるよね」
神松は真剣な顔つきになってそう言った。
はっとしたように、チョロ松は肩を震わせ、口をキュッと結んだ。
「最近、1人の気配を感じにくくなったんだけどさ」
1人。
その『1人』の正体は、もうわかっている。だが、誰も口には出さなかった。
「もしかしてだけど、1人、いない?」
「ちがう! いるよ! おそ松兄さんは!」
チョロ松が叫んだ。あの出来事を疑う自分がひどく憎くて。どうせなら、なかったことにすればいいのに、チョロ松はそれさえもできなかった。
神松はチョロ松の様子を見て、状況を察したようだった。だが、そんな気配りなど、なかった。
「ずっと、妙な違和感があってさ。なんか、自分の中の1人が姿を消したような……。もしかしたら、死んでたり――」
「てっめぇっ!」
神松の言葉をさえぎると、チョロ松はつかみかかった。
「冗談もほどほどにしろ! おそ松兄さんは、おそ松兄さんはっ! 生きてる! わかってんだろ⁉」
「チョロ松兄さんっ!」
今にも殴りそうなチョロ松を、トド松が押さえこんだ。それでもチョロ松は必死にもがいて、トド松から逃れようとした。
「神松、やめておけ。はっきり言って、俺もきつい冗談にしか聞こえない」
カラ松は、震える手をグッと握り、そう言った。カラ松の声を聞き、神松は、部屋を見回した。膝を折り曲げて座る一松。おろおろとした様子で一松の隣に立つ十四松。怒りを感じながらも、それを顔に出さぬようにうつむくカラ松。息を荒げながらとびかかろうとしているチョロ松に、それを押さえながら涙をごまかすトド松。どの顔にも、不安や悲しみがあらわになっている。
神松はフッと息を吐き、遠慮気味に笑った。
「今は、何言っても無駄だよね。僕も調べてみるよ」
そう言って、神松は部屋を出て行った。