第1章
あの日から1日がたった。初詣に行くも、6人で行かないことに抵抗があるようで全員別行動に熱心に取り掛かっていた。カラ松はまたイタい革ジャンを羽織り、グラサンをかけると釣り堀へと向かった。一松はいつもどうり部屋着のまま路地裏へ、十四松は野球着を着て、バットをかついで出ていった。いつものように威勢のいい掛け声は聞こえなかった。おそ松はただ何もせず、ぼーっと部屋の天井を眺めていた。2人っきりは気まずく、喧嘩したあとなので話しにくい。脳内で色々考えた結果、チョロ松は街に散歩しに行った。途中で橋本にゃーのグッズ売り場に昨日破かれた雑誌が隅に見えたのは見なかったことにする。
散々怒鳴り散らした昨日が馬鹿らしく、恥ずかしくもあった。帰ったらなんと言おうか。兄弟に心配をかけさせておきながら、ライブ会場限定ものだと騒いでいた雑誌を手に持って帰る間抜けな自分を想像する。
(うわあぁ! ないない、絶対ない――!)
間抜けにもほどがある。絶対呆れられるに決まっているではないか。
雑誌に目が行くのを必死に誤魔化し、店頭から離れる。
「なんて言って帰ろうかな……」
しかし雑誌のことは言うつもりはない。言うなんて、恥ずかしくて死ねる。
ついさっき知った現実に打ちのめされていると、視界の隅に赤いパーカーが映った。見覚えのある色。自分と同じパツンとした髪型。違うところといえば2本のアホ毛くらいで――
「おそ松、にい、さん?」