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六色 0-5

――で? おそ松兄さんは怒って出て行ったと」

 トド松が気だるそうに机を一定のリズムで叩いた。

「まあ、そうだけど」

「ほんっと、めんどくさいよねー」

 チョロ松に向けて、長い溜息をつく。

「でも、おそ松兄さんが悪いだろ?」

「まあねー。ボクも一理あるよ? でもさ、他の兄弟巻き込まないでよ、めんどくさいし」

「ただめんどくさいだけでしょ⁉」

 チョロ松がツッコミを入れる。その様子を見ると、機嫌はなおってきたようだ。

「トッティーに賛成。巻き込まないで」

 一松が一応挙手して言う。十四松は心配なのか、玄関でおそ松の帰りを待っている。

「チョロ松、ちょっと、おそ松に言いすぎていたぞ」

「えぇ?」

 カラ松にまで言われ、チョロ松は顔をしかめた。

「たしかに、チョロ松兄さん言い過ぎー。うっとうしいって。本当に思ってるわけ?」

「それはっ……

 チョロ松が言葉につまってうなる。それと同時くらいに玄関から声がした。

「おそ松兄さん!」

 十四松の、心底安心したという声が聞こえる。

「おかえり!」

 おそ松の声はしない。まだすねているのだろうか。ふすまが開き、おそ松が姿を現した。

「おかえりー。どこ行ってたの?」

 トド松の問いには答えず、おそ松はあたりを見渡してつぶやいた。

「せまいな」

「は?」

 一松がいきなりの言葉に驚いていると、おそ松は笑った。

「お前らさ、自立とか考えないわけ? 正直、お前らといんの飽きた」

「おそ松兄さん?」

 いつもとは全く違う声色に不信感を抱く。おそ松は誰とも目を合わせずにつぶやいた。

「1人の世界があったらなぁ……

 すねているわけじゃない。怒っているわけでもない。ただ、なんというか、思ったことをそのまま声に出している。そんな感じだ。

 沈黙が続き、ぎこちない。空気を変えようと、カラ松が言う。

「そうだ、おそ松。明日、初詣行かないか?6人で一緒に――

「行かない。5人で行って」

……そうか」

 

 年末年始。テレビは祝い、街は賑わっている。多くの人が目標を持って1年を望む。その中で松野家は最悪のスタートを切った。


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