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六色 0-4

「もう1本……

「飲みすぎだバーロー! てかもう帰れこんちくしょう!」

 チョロ松と別れたおそ松はチビ太のところへ来ていた。他はどうしたと問いかけるチビ太を無視し、おそ松は愚痴ってやけ酒を飲んでいたのだ。

「はーぁ……。なあ、チビ太」

 ふと、おそ松がチビ太を呼んだ。チビ太が黙っていると、おそ松は噛み締めるようにつぶやいた。

「兄弟ってさ、必要だと思う?」

……さあな。お前が1番分かってんだろ、おそ松。自分で考えやがれ」

「俺さ、まいっちゃってんだ。最近は弟がよく反抗すんだよなあ」

 少し上を向いて話すおそ松のか細い声は、嘘とは思えなかった。チビ太は何を思ったのか、おそ松の横におでんを盛った皿を置いた。

「いつものことじゃねーか。こっちからしたら喧嘩できる相手がいるって羨ましいことだぞ? いつも隣に誰かがいるって、それだけで幸せじゃねーか。ま、お前らにはわかんねーだろうな」

優しく話すチビ太の顔を、おそ松はじっと見つめた。

「うん。全くわかんない」

「は?」

「だーかーらー! チビ太の思ってる兄弟って理想中の理想なわけ! わかる⁉ 六つ子って5人の仲間じゃなくて5人の敵だからね!」

「前も聞いたぞバーロー!」

 全く聞き入れようとしないおそ松にストレスが溜まる。

「てか、本当、もう帰れ! んで仲直りして来い! てやんでぃバーローちくしょう!」

「無理! もう絶交するから俺! バーカ! ああもう、バァァカ!」

 机を叩き、勢いよく立ち上がるおそ松。ひょうしにおでんの汁が机にこぼれた。

 もうすっかり暗くなった街に消えていくおそ松を見て、チビ太は呆れたようにつぶやいた。

「代金払え、バーロー……


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