「もう1本……」
「飲みすぎだバーロー! てかもう帰れこんちくしょう!」
チョロ松と別れたおそ松はチビ太のところへ来ていた。他はどうしたと問いかけるチビ太を無視し、おそ松は愚痴ってやけ酒を飲んでいたのだ。
「はーぁ……。なあ、チビ太」
ふと、おそ松がチビ太を呼んだ。チビ太が黙っていると、おそ松は噛み締めるようにつぶやいた。
「兄弟ってさ、必要だと思う?」
「……さあな。お前が1番分かってんだろ、おそ松。自分で考えやがれ」
「俺さ、まいっちゃってんだ。最近は弟がよく反抗すんだよなあ」
少し上を向いて話すおそ松のか細い声は、嘘とは思えなかった。チビ太は何を思ったのか、おそ松の横におでんを盛った皿を置いた。
「いつものことじゃねーか。こっちからしたら喧嘩できる相手がいるって羨ましいことだぞ? いつも隣に誰かがいるって、それだけで幸せじゃねーか。ま、お前らにはわかんねーだろうな」
優しく話すチビ太の顔を、おそ松はじっと見つめた。
「うん。全くわかんない」
「は?」
「だーかーらー! チビ太の思ってる兄弟って理想中の理想なわけ! わかる⁉ 六つ子って5人の仲間じゃなくて5人の敵だからね!」
「前も聞いたぞバーロー!」
全く聞き入れようとしないおそ松にストレスが溜まる。
「てか、本当、もう帰れ! んで仲直りして来い! てやんでぃバーローちくしょう!」
「無理! もう絶交するから俺! バーカ! ああもう、バァァカ!」
机を叩き、勢いよく立ち上がるおそ松。ひょうしにおでんの汁が机にこぼれた。
もうすっかり暗くなった街に消えていくおそ松を見て、チビ太は呆れたようにつぶやいた。
「代金払え、バーロー……」